相続の基礎控除はどう計算する?法改正後の「相続登記義務化」と合わせて知りたい基礎知識

「親族が亡くなり、遺産を相続することになったけれど、相続税はいくらかかるのだろう?」
「実家を相続したけれど、誰も住む予定がない。名義変更はしなくても大丈夫?」
ご家族がお亡くなりになり、悲しみに暮れる間もなく直面するのが「相続」という現実です。その中でも、多くの方がまず不安に感じるのが「税金は払えるのか?」という金銭的な問題と、「不動産の手続きをどうすればいいのか?」という法律的な問題です。
相続の手続きは一生のうちに何度も経験するものではないため、いざ当事者となると「何から手をつけて良いか分からない」という方がほとんどです。特に近年は法律の大きな改正があり、知らずに放置しているとペナルティ(過料)の対象になってしまうリスクも潜んでいます。
本コラムでは、相続税がかかるかどうかの分かれ道となる「基礎控除」の正しい計算方法と、遺産の評価額の考え方、そして2024年4月の法改正によって義務化された「相続登記(不動産の名義変更)」について、具体的な事例やよくある質問を交えながら徹底解説します。この記事を読めば、今ご自身がまず何をすべきかが明確になるはずです。
目次
1. 相続税の申告不要?「基礎控除」の計算式
遺産を相続したからといって、必ずしも全ての人に相続税がかかり、税務署へ行く必要があるわけではありません。日本の税法では、遺族の生活保障などの観点から、一定の金額までは税金がかからない「基礎控除(きそこうじょ)」という非課税枠が設けられています。
亡くなった方(被相続人)の「遺産総額」がこの基礎控除額を下回っていれば、相続税の申告も納税も一切不要となります。事実、日本で相続税の申告が必要になるのは、全体の約8〜9%程度と言われています。まずはご自身のケースで基礎控除額がいくらになるのかを把握することが、相続手続きの第一歩です。
【相続税の基礎控除額の計算式】
基礎控除額は、以下の計算式で求めることができます。
法定相続人とは?誰がカウントされる?
計算式にある「法定相続人」とは、民法で定められた「遺産を受け継ぐ権利がある人」のことです。法定相続人には明確な優先順位があり、以下のように決まります。
- 常に相続人:配偶者(夫や妻。※事実婚・内縁関係は含まれません)
- 第1順位:子ども(子どもが既に亡くなっている場合は、その子ども=孫が引き継ぎます)
- 第2順位:直系尊属(親や祖父母。第1順位が誰もいない場合のみ権利が回ってきます)
- 第3順位:兄弟姉妹(第1・第2順位が誰もいない場合のみ。亡くなっている場合は甥や姪)
ケース別・基礎控除額のシミュレーション
具体的な家族構成に当てはめて、基礎控除額を計算してみましょう。
例えば、法定相続人が「配偶者と子ども2人(計3人)」の場合、
3,000万円 +(600万円 × 3人)= 4,800万円 となります。
このケースでは、遺産総額が4,800万円以下であれば相続税はかかりません。
【その他のケース例】
- 配偶者と子ども1人(計2人):
3,000万円 +(600万円 × 2人)= 4,200万円 - 子ども1人のみ(計1人):
3,000万円 +(600万円 × 1人)= 3,600万円 - 配偶者と亡くなった方の兄弟2人(計3人):
3,000万円 +(600万円 × 3人)= 4,800万円
基礎控除の計算で間違えやすい3つの注意点
- 相続放棄をした人がいる場合
法定相続人の中に家庭裁判所で「相続放棄」をした人がいても、基礎控除の計算上は「放棄はなかったもの」として法定相続人の数にカウントします。例えば、相続人3人のうち1人が借金を理由に放棄しても、基礎控除額は4,800万円のまま減ることはありません。 - 養子がいる場合のカウント制限
法定相続人に含めることができる養子の数には制限があります。亡くなった方に実子がいる場合は「1人まで」、実子がいない場合は「2人まで」しかカウントできません。これは、基礎控除額を増やす目的でむやみに養子縁組を行う過度な節税を防ぐためです。 - 「みなし相続財産」の存在
生命保険の死亡保険金や、会社から支払われる死亡退職金は、民法上の遺産ではありませんが、相続税の計算上は「みなし相続財産」として遺産総額に加算されます。ただし、これらには別途「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠が用意されています。
2. 遺産総額はどうやって計算する?とくに注意したい「不動産の評価」
基礎控除額が分かったら、次は亡くなった方の「遺産総額」がいくらになるのかを算出します。現金や預貯金であれば通帳の残高を見れば一目瞭然ですが、問題は「不動産(土地・建物)」です。
不動産の価値を「買ったときの値段(購入価格)」や「現在売ったらこれくらいだろうという価格(実勢価格)」で計算してしまう方が非常に多いのですが、これは間違いです。相続税の計算における不動産評価は、原則として国が定めた以下の基準で行います。
- 土地(市街地の場合):路線価方式
道路ごとに国税庁が定めた「路線価」に、土地の面積を掛けて計算します。おおむね時価の80%程度の評価額になります。 - 土地(郊外や農村部の場合):倍率方式
路線価が設定されていない地域では、毎年送られてくる固定資産税の課税明細書に記載された「固定資産税評価額」に、国が定めた一定の倍率を掛けて計算します。 - 家屋(建物):固定資産税評価額
建物については、固定資産税評価額(時価の70%程度)をそのまま相続税の評価額として使用します。
このように、不動産は現金で持っているよりも評価額が下がる仕組みになっています。もし遺産に不動産が含まれている場合は、まずは毎年春に役所から届く「固定資産税の納税通知書」を探してみてください。
⚠️【重要なお知らせ】
当事務所は司法書士のため、遺産分割や不動産の名義変更手続きはサポートしておりますが、具体的な「相続税額の計算」や「税務署への申告・税務相談」はお受けすることができません。 税金に関する個別・具体的なご相談につきましては、恐れ入りますが税理士へお問い合わせいただきますようお願いいたします。
3. 忘れてはいけない「相続登記の義務化」
基礎控除の計算が終わり、遺産の分け方も決まった後、遺産の中に「不動産(土地・家屋)」が含まれていた場合に絶対に忘れてはいけないのが相続登記(不動産の名義変更)です。
2024年(令和6年)4月1日より、法律が改正され「相続登記が義務化」されました。
なぜ相続登記が義務化されたのか?背景にある「所有者不明土地問題」
日本全国で現在、持ち主が分からない「所有者不明土地」が急増しており、その総面積は九州本島を上回ると言われています。相続登記が行われないまま数世代(祖父→父→子など)が経過すると、法定相続人が数十人から百人以上に膨れ上がってしまいます。
いざその土地を売却しようとしたり、自治体が災害対策の公共事業を進めたりしようとしても、顔も知らない相続人全員を探し出し、実印と印鑑証明書をもらうことは事実上不可能です。
このような深刻な社会問題を解決し、土地の荒廃を防ぐために、国はペナルティ付きで相続登記を義務付ける決定を下しました。
【相続登記義務化のポイント】
- 期限: 相続(遺言も含みます)によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請しなければなりません。
- 罰則: 正当な理由なく申請を怠った場合、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
- 過去の相続も対象: 義務化される前に発生した相続であっても、まだ名義変更が終わっていなければ義務化の対象となります。
過料はどのように請求されるのか?
期限を過ぎたからといって、ある日突然10万円の請求書が届くわけではありません。法務局の登記官が義務違反を把握した場合、まずは「登記を催告する通知」が送られてきます。それでも正当な理由なく対応しない場合に、法務局から裁判所へ通知が行き、裁判所の判断によって過料が科されるというプロセスを踏みます。
相続登記を放置する3つのリスク
不動産の名義変更を放置することには大きなリスクが伴います。
- 不動産を売却・活用できない:亡くなった方の名義のままでは、不動産を売ることも、建物を建て替えることも、不動産を担保にお金を借りることもできません。
- 他の相続人の借金による差し押さえリスク:相続人の一人が借金を抱えていた場合、債権者が勝手に法定相続分で登記を入れ、その持ち分を差し押さえてしまう危険性があります。
- 二次相続で手続きが泥沼化:名義変更をしないうちに次の相続が発生する(相続人が亡くなる)と、関係する相続人の数がねずみ算式に増え、面識のない親戚同士で遺産分割の話し合いをしなければならなくなります。
4. 相続に関するよくある質問(Q&A)
Q. 基礎控除内だったので税務署への申告はしません。それでも法務局への相続登記は必要ですか?
A. はい、絶対に必要です。相続税の申告(税務署)と相続登記(法務局)は全く別の手続きです。税金が0円であっても、不動産がある限り名義変更は義務となります。
Q. 借金も相続財産に含まれますか?基礎控除から引くことはできますか?
A. はい、亡くなった方の借金(マイナスの財産)や、未払いの税金、葬式費用などは、遺産総額から差し引くこと(債務控除)ができます。もしプラスの財産よりも借金の方が多い場合は、家庭裁判所で「相続放棄」の手続きを3ヶ月以内に行う必要があります。
Q. 遺産分割の話し合いがまとまらず、3年以内に登記できそうにありません。ペナルティを受けますか?
A. 遺産分割が難航している場合は、とりあえず「相続人申告登記」という簡易な手続きを行うか、一旦「法定相続分での登記」を入れることで、過料のペナルティを免れることができます。
5. 複雑な相続手続き、一人で抱え込まず専門家へ!
相続が発生したら、まずは「法定相続人の確定」と「遺産の全体像の把握」を行い、基礎控除の計算をします。そして、不動産がある場合は早急に遺産分割協議を行い、法務局で「相続登記」を済ませる必要があります。
しかし、これらの手続きをご自身で行うには、以下のような高いハードルがあります。
- 亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を全国の役所から集める必要がある
- 専門用語ばかりの遺産分割協議書を正確に作成しなければならない
- 平日の日中に法務局や銀行、役所に何度も足を運ばなければならない
まとめ
相続が発生したら、まずは法定相続人の数を確認して「基礎控除」の計算を行いましょう。
そして、実家や土地を受け継ぐ場合は、ペナルティを受けないためにもお早めに相続登記を済ませることが重要です。
「日中は仕事で役所に行けない」「手続きが複雑でわからない」とお困りの場合は、相続手続きの専門家へお気軽にご相談ください。
もしもの時の相続手続きに不安がある方は、まずは専門家へご相談を
相続手続きは、基礎控除などの正しい知識を持ち、事前に準備をしておくことで、将来のご家族の負担やトラブルを最小限に抑えることが可能です。「うちの場合は何から手をつければいい?」「どこまで手続きを代行してもらえる?」など、少しでも不安がある方は、親御様が元気なうちからぜひ一度当事務所の無料相談をご活用ください。
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当事務所が相続で選ばれる理由

この記事の執筆者
- 司法書士法人リーガル・パートナー 代表司法書士 小和田 大輔
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保有資格 司法書士、行政書士、宅地建物取引主任者
群馬司法書士会 第475号
簡裁訴訟代理認定番号 第307038号専門分野 不動産登記全般、相続全般 経歴 群馬司法書士会所属。平成10年に横浜国立大学卒業後、大手ハウスメーカーに入社。同年に宅地建物取引主任者試験に合格。平成13年に退社後、平成15年に司法書士試験と行政書士試験に合格。平成16年に合同司法書士リーガル・パートナーを開業。同年に簡易訴訟代理認定を取得。平成17年に群馬県初の司法書士法人である、司法書士法人リーガル・パートナー開業。現在は、群馬県の太田市を中心に、桐生市、高崎市に事務所がある。群馬県の相続の専門家として、群馬県内の相続の相談に対応している。
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